戦後70年談話について…

2015年08月06日 10:50

ここに、戦後70年総理談話について発表されたことを掲載しておきます。

みなさんは、どのように考えるでしょうか。

戦後70年総理談話について

 この夏、安倍晋三総理大臣が戦後70年に際して発表すると報道されている談話について、

 日本国内でも海外でも強い関心が寄せられております。

 下記に名を連ねる私共国際法学、歴史学、国際政治学の学徒は、

日本国の一員として、 また世界に共通する法と歴史と政治の問題を

学問の対象とする者として、この談話にかか わる諸問題について多年

研究に携わってまいりました。 

私共の間には、学問的立場と政治的信条において、相違があります。

しかしながら、そ のような相違を超えて、私共は下記の点において

考えを同じくするものであり、それを日 本国民の皆様と国政を司る方々に伝え、

また関係する諸外国の方々にも知って頂くことは、 

専門家の社会的責任であると考えるに至りました。

ここに以下の所見を明らかにする次第 です。

 (1)戦後70年という節目に表明される総理談話は、なによりもまず、 

大多数の国民が 飢餓に苦しみ、

多くの都市が灰燼に帰していた1945年の日本から、

今日の平和で豊か な日本を築き上げた先人達の努力に対して深甚な感謝の意を捧げ、

そうした日本を誤りな く次の世代に引き渡して行くという国政の最高責任者の意志を

日本国民に示すものである べきであります。

このことは、戦後50年、60年たると70年たるとを問わない、

先世 代と将来世代の国民に対する現世代の国民の責任であり、

この点広く社会の合意があるも のと考えます。

 (2)また、こうした戦後日本の復興と繁栄は日本国民の努力のみによるものでなく、

講 和と国交正常化に際して賠償を放棄するなど、

戦後日本の再出発のために寛大な態度を示 し、

その後も日本の安全と経済的繁栄をさまざまな形で支え、

助けてくれた諸外国の日本 への理解と期待、

そして支援によるものでもありました。このことは、さまざまな研究を 

通して今日よく知られております。

こうした海外の諸国民への深い感謝の気持ちもまた示 されるべきものと考えます。

 (3)さらに、戦後の復興と繁栄をもたらした日本国民の一貫した努力は、

台湾、朝鮮の 植民地化に加えて、1931-45年の戦争が大きな誤りであり、

この戦争によって三百 万人以上の日本国民とそれに数倍する中国

その他の諸外国民の犠牲を出したことへの痛切 な反省に基づき、

そうした過ちを二度と犯さないという決意に基づくものでありました。

 戦争で犠牲となった人々への強い贖罪感と悔恨の念が、戦後日本の平和と

経済発展を支え た原動力だったのです。戦後70年、80年、90年と時が経てば、

こうした思いが薄れ ていくことはやむを得ないことかもしれません。

しかしながら、実にこの思いこそ、戦後 の日本の平和と繁栄を支えた原点、

文字通りの初心であり、決して忘れ去られてはならな いものでありましょう。 

(4)このことは、戦後50年の村山談話に含まれ、戦後60年の小泉談話でも継承され

た「侵略」や「植民地支配」への「痛切な反省」、

「心からのお詫び」などの言葉を継承 すべきか否かという、

世上論じられている点にかかわります。ある特定の言葉を用いるか 否かで総

理の談話の善し悪しを論ずべきものでなく、ましてや「村山談話」という

特定の 総理談話の個々の言葉を継承するか否かがその後の総理談話の質を

決する基準でない、と いうのは多くの専門家、そしてなによりも多くの国民が

同意するところかもしれません。 しかし、いかなる言葉で語られるかは、

それが国際的にも大きな影響をもつ責任ある文書 を評価する上で、

どの国でもどの時代でもきわめて重要な基準です。

政治を司る者は、こ うした言葉の枢要性を誰よりも深く考える

責務を負っているはずです。このことは、歴史 と法と政治を研究してきた私共が、

日本の為政者に対して特に強く申し上げたいところで す。 

(5)言葉の問題を含めて、「村山談話」や「小泉談話」を「安倍談話」が

いかに継承す るかは、これまでの総理自身の言動も原因となって、

内外で広く論ぜられ、政治争点化し ております。このことは、国内もさることながら、

中国、韓国、米国などを含む、日本と 密接な関係をもつ国々で広く観察される現象です。

こうした状況の下では、「安倍談話」 において「村山談話」や「小泉談話」を

構成する重要な言葉が採用されなかった場合、そ の点にもっぱら国際的な注目が集まり、

総理の談話それ自体が否定的な評価を受ける可能 性が高いだけでなく、

これまで首相や官房長官が談話を通じて強調してきた過去への反省 についてまで

関係諸国に誤解と不信が生まれるのではないかと危惧いたします。安

倍総理 がしばしば強調される「村山談話」や「小泉談話」を「全体として継承する」

ということ の意味を、具体的な言語表現によって明らかにされるよう、

強く要望するものです。 

(6)以上に述べたことは、戦後70年談話が閣議決定を経ない「総理大臣の談話」

であ っても変わりはありません。日本の内外において総理大臣は国政の最高責任者として

日本 を代表する立場にあり、閣議決定の有無といった問題は、

一般国民にとって、ましてや海 外の諸国民にとって、

ほとんど意識されることはありません。肝心なのは談話の中身です。 

70年談話がその「言葉」ゆえに国際社会で否定的に受け取られ、

その結果、過去と現在 と将来の日本国民全体が不名誉な立場に置かれ、

現在と将来の日本国民が大きな不利益を 被ることのないよう、

安倍総理が「談話」で用いられる「言葉」について考え抜かれた賢 明な途を

とられることを切に望むものです。 

(7)日本が1931年から45年までに遂行した戦争が国際法上違法な

侵略戦争であっ たと認めることは、日本国民にとって辛いことであります。

その時代、先人達は、現世代 を含む他のどの時代の日本国民よりも厳しい試練に直面し、

甚大な犠牲を被りました。そ うした先人の行為が誤っていたということは、

後生のわたしたちが軽々しく断ずべきこと ではないかもしれません。

しかしながら、日本が侵略されたわけではなく、日本が中国や 東南アジア、

真珠湾を攻撃し、三百万余の国民を犠牲とし、その数倍に及ぶ諸国の国民を

 死に至らしめた戦争がこの上ない過誤であったことは、

残念ながら否定しようがありませ ん。そしてまた、日本が台湾や朝鮮を植民地として

統治したことは、紛れもない事実です。 3 歴史においてどの国も過ちを犯すものであり、

日本もまたこの時期過ちを犯したことは潔 く認めるべきであります。

そうした潔さこそ、国際社会において日本が道義的に評価され、 

わたしたち日本国民がむしろ誇りとすべき態度であると考えます。 

(8)この点に関連して、安倍総理を含む歴代の総理は、侵略の定義は定まっていないと いう

趣旨の国会答弁などを行っておりますが、これは学問的に必ずしも正しい解釈とは思 われません。

なによりもそうした発言は、日本が1931年から遂行した戦争が国際法上

 違法な侵略戦争であったという、国際社会で確立した評価を否定しようとしているのでは ないかとの疑念を

生じさせるものであり、日本に大きな不利益をもたらすものと考えます。 

20世紀前半の国際社会は、第一次大戦の甚大な惨禍を経験して、

戦争を違法化する努 力を重ねて来ました。1928年の不戦条約はその代表であり、

日本も締約国であった同 条約は自衛以外の戦争を明確に禁止しておりました。

1931年に始まる満州事変が19 28年の張作霖爆殺事件以来の関東軍の陰謀によって

引き起こされたものであったことは、 歴史学上明らかにされております。

当時の日本政府はこれを自衛権の行使と主張しました が、

国際連盟はその主張を受け入れませんでした。その後の日中戦争、

太平洋戦争を含め た1931-45年の戦争が名目の如何と関係なく、

その実質において日本による違法な 侵略戦争であったことは、

国際法上も歴史学上も国際的に評価が定着しております。

 戦後国際社会は一貫してこうした認識を維持してきたのであり、

これを否定することは、 中国・韓国のみならず、米国を含む圧倒的多数の国々に

共通する認識を否定することにな ります。戦後70年にわたって日本国民が

営々と築き上げた日本の高い国際的評価を、日 本が遂行したかつての戦争の不正かつ

違法な性格をあいまいにすることによって無にする ことがあってはならない。

これが専門研究者としての私共の考えであり、同時に多くの日 本国民が共有する考えでもあると

確信しております。 1924年、神戸で行われた有名な大アジア主義演説において、

孫文は日本が西洋覇道 の鷹犬となるか東洋王道の干城となるか、と日本の国民に問いかけました。

私共は西洋を 覇道と結び付け、東洋を王道と結び付ける孫文の見解を

必ずしもそのまま受け入れるもの ではありませんが、中国が欧米列強と日本によって

半ば植民地の状態にされていた当時の 状況下において、この問いかけはまことに正鵠を

得たものであったと考えます。残念なが ら日本は覇道の道を歩み、その結果ほとんど

国を滅ぼすに至りました。 戦後日本はこのことを深い教訓として胸に刻み、

世界に誇りうる平和と繁栄の道を歩ん で参りました。日本が将来にわたってこの王道を

歩み続け、戦後築き上げた平和で経済的 に繁栄し安全な社会をさらに磨きあげ、

他の国への経済・技術・文化的協力を通してそれ を分かち合い、

国民が誇り得る世界の範たる国であり続けて欲しいと願わずにはいられま せん。

私共は、歴史、国際法、国際政治の研究に携わる学徒として、

いやなによりも日本 国の一員として、そう考えます。 

総理が、戦前と戦後の日本の歴史に対する世界の評価に深く思いを致し、

現在と将来の 4 日本国民が世界のどこでもそして誰に対しても胸を張って

「これが日本の総理大臣の談話 である」と引用することができる、

そうした談話を発して下さることを願ってやみません。 

2015年7月17日 代表 大沼 保昭 (明治大学特任教授、国際法)

 三谷 太一郎 (東京大学名誉教授、日本政治外交史) 吾郷 眞一 (立命館大学特別招聘教授、国際法) 浅田 正彦 (京都大学教授、国際法) 浅野 豊美 (早稲田大学教授、日本政治外交史) 阿部 浩己 (神奈川大学教授、国際法) 天児 慧 (早稲田大学教授、現代中国論) 粟屋 憲太郎 (立教大学名誉教授、日本近現代史) 石井 寛治 (東京大学名誉教授、日本経済史) 石田 淳 (東京大学教授、国際政治) 石田 憲 (千葉大学教授、国際政治史) 位田 隆一 (同志社大学特別客員教授、国際法) 入江 昭 (ハーヴァード大学名誉教授、アメリカ外交史) 内海 愛子 (恵泉女学園大学名誉教授、日本・アジア関係論) 遠藤 誠治 (成蹊大学教授、国際政治) 緒方 貞子 (元国連難民高等弁務官、国際関係史) 小此木 政夫 (慶應義塾大学名誉教授、韓国・朝鮮政治) 小畑 郁 (名古屋大学教授、国際法) 加藤 陽子 (東京大学教授、日本近代史) 吉川 元 (広島平和研究所教授、国際政治) 木畑 洋一 (成城大学教授、国際関係史) 木宮 正史 (東京大学教授、国際政治) 倉沢 愛子 (慶應義塾大学名誉教授、東南アジア史) 黒沢 文貴 (東京女子大学教授、日本近代史) 黒澤 満 (大阪女学院大学教授、国際法) 香西 茂 (京都大学名誉教授、国際法) 小菅 信子 (山梨学院大学教授、近現代史) 後藤 乾一 (早稲田大学名誉教授、東南アジア近現代史) 齋藤 民徒 (金城学院大学教授、国際法) 5 佐藤 哲夫 (一橋大学教授、国際法) 篠原 初枝 (早稲田大学教授、国際関係史) 申 惠丰 (青山学院大学教授、国際法) 杉原 高嶺 (京都大学名誉教授、国際法) 杉山 伸也 (慶應義塾大学名誉教授、日本経済史) 添谷 芳秀 (慶應義塾大学教授、国際政治) 高原 明生 (東京大学教授、国際政治) 田中 孝彦 (早稲田大学教授、国際関係史) 田中 宏 (一橋大学名誉教授、日本社会論) 外村 大 (東京大学教授、日本近現代史) 豊田 哲也 (国際教養大学准教授、国際法) 中北 浩爾 (一橋大学教授、日本政治外交史) 中島 岳志 (北海道大学准教授、政治学) 中谷 和弘 (東京大学教授、国際法) 中見 立夫 (東京外国語大学教授、東アジア国際関係史) 中見 真理 (清泉女子大学教授、国際関係思想史) 納家 政嗣 (上智大学特任教授、国際政治) 西海 真樹 (中央大学教授、国際法) 西崎 文子 (東京大学教授、アメリカ政治外交史) 野村 浩一 (立教大学名誉教授、中国近現代史) 波多野 澄雄 (筑波大学名誉教授、日本政治外交史) 初瀬 龍平 (京都女子大学客員教授、国際政治) 原 朗 (東京大学名誉教授、日本経済史) 原 彬久 (東京国際大学名誉教授、国際政治) 半藤 一利 (現代史家) 平野 健一郎 (早稲田大学名誉教授、東アジア国際関係史) 廣瀬 和子 (上智大学名誉教授、国際法) 藤原 帰一 (東京大学教授、国際政治) 保阪 正康 (現代史家) 松井 芳郎 (名古屋大学名誉教授、国際法) 松浦 正孝 (立教大学教授、日本政治外交史) 松尾 文夫 (現代史家) 松本 三之介 (東京大学名誉教授、日本政治思想史) 真山 全 (大阪大学教授、国際法) 三谷 博 (東京大学名誉教授、日本近代史) 宮野 洋一 (中央大学教授、国際法) 6 毛里 和子 (早稲田大学名誉教授、中国政治) 最上 敏樹 (早稲田大学教授、国際法) 森山 茂徳 (首都大学東京名誉教授、近代日韓関係史) 山影 進 (青山学院大学教授、国際関係論) 山形 英郎 (名古屋大学教授、国際法) 山室 信一 (京都大学教授、近代法政思想史) 油井 大三郎 (東京女子大学特任教授、日米関係史) 吉田 裕 (一橋大学教授、日本近現代史) 和田 春樹 (東京大学名誉教授、歴史学)

歴史、国際法、国際政治の学者・識者74人が、
 
政治的信条の違いを超え
 
「安倍談話」についての声明を発表ました。
 
呼びかけ人代表の三谷太一郎氏(東京大学名誉教授 日本政治外交史)、
 
大沼保昭氏(明治大学特任教授 国際法)らが会見し、
 
記者の質問に答えました。
 
そのときに読み上げられた安倍首相の『戦後70年談話』についての声明文です。
 
そこで、記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2015年8月号に掲載)が書かれていました。
 
『学者の良心と責任とは何か』
 
学者が学者である所以はどこにあるのか。
 
記者会見の司会をしながら、そのことがずっと頭にあった。
 
国際法学者、歴史学者、国際政治学者74人による
 
「戦後70年総理談話に­ついて」と題した声明は、
 
そのひとつの姿を示したと言っていい。
 
歴史的事実に基づきながら、
 
国際的な視野に立って過去の戦争と戦後日本の歩みを考え、
 
未来につなげていく。
 
それは憲法をどう解釈するかを第一義にする憲法学者などとは
 
自ずと違ってくる。政治的信条や学問的立場の違いを
 
超えてわれわれの最小限の意志を示そう。
 
そういう熱意が伝わってくる記者会見だった。
 
代表は三谷太一郎さんと大沼保昭さん。
 
三谷さんのような文化勲章受章者が署名の先頭に立つのは珍しいことだろう。
 
署名者はその道のエキスパートであり、2つの明確なメッセ­ージを発している。
 
ひとつは日本が1931年から45年まで遂行した戦争は、
 
国際法上違法な侵略戦争であ­ったことは国際社会で確立した評価であること、
 
もうひとつは「村山談話」や「小泉談話­」を「全体として継承する」という安倍首相に対し、
 
具体的な表現によって明らかにするよう求めていることである。
 
記者会見では、特定のイデオロギーや立場に基づく質問も予想されたが、
 
大沼さんらの真摯な対応で落ち着いた会見になった。
 
声明を読めばよくわかるが、ある特定の言葉を使うかどうかで
 
総理の談話の良し悪しを論ずることの是非や、
 
後世の私たちが侵略かどうかを論断することへの逡巡にも言及している。
 
異論にも配慮した苦心の文章であることを参加者も感じ取ったことだろう。
 
全文を読むことをお勧めしたい。
 
企画委員 読売新聞特別編集委員
 
橋本 五郎
 
とこのように橋本氏が書かれています。
 
戦後70年。
 
世界で唯一、被爆している国、日本。
 
いま、歴史をふり返りながら、これからの歴史に生かしてほしいと思うのは、
 
わたしだけでしょうか。

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