はじめに ~逮捕後から鑑別所入所、少年審判までの流れ~
少年が警察に逮捕されて審判を行うまでの基本的な流れは以下のとおりです。
①逮捕・勾留
②48時間以内に検察に送致
③警察署内の留置場に勾留(10日~25日程度)
④裁判官による観護措置が必要か否かの判断
⑤観護措置(鑑別所送致)
⑥少年審判
以上のような流れになり、鑑別所は⑤に該当します。
少年院は、⑥少年審判の結果、「少年院送致」を言い渡された少年を
収容するための施設となります。
鑑別所
鑑別所(正式名称:少年鑑別所)とは、家庭裁判所による少年審判を実施する前に、
対象少年の非行性や性格などを「鑑別」するための施設となります。
(その他、学校や一般家庭から、非行少年に関する相談を受け付けたりといった業務もしています。)
鑑別所では、専門的な調査・診断を行うことで少年たちが非行に走るようになった原因・動機、
また今後どのようにすれば更生できるかなどを、
医学・心理学・社会学・教育学・人間科学などの専門的知識や技術によって明らかにしていきます。
この際、外部機関である家庭裁判所の家裁調査官と呼ばれる調査官によって、
少年の様々な情報がまとめられていきます。
そのため、鑑別所にいる間はこの調査官との面接が複数回あります。
この家裁調査官との面接内容は、少年審判の際に非常に重要な書類になります。
また、審判には家裁調査官も出席します。
そのため、その後の処遇決定(保護観察処分や、少年院送致など)を決めるのに、
家裁調査官との面接は大きな影響を持ちます。
鑑別の方法
前述のとおり、鑑別所は少年院とは違います。
主に、面接・心理テスト・意図的行動観察などにより少年を鑑別(分析)するための施設です。
具体的な鑑別方法の流れの一例を紹介します。
①面接を行い、少年自身の気持ちや考えを聞くことで、問題の所在を確かめる
②知能や性格、適性等を客観的に把握するために各種のテストを行う
③少年のありのままの姿をとらえるために行動観察を行う
④絵画や作文、貼り絵などを通して、少年に対する理解を更に深める
⑤家庭裁判所、保護者等から情報を収集する
⑥判定会議を行い、討議を経て、少年の処遇方針について結論を出す
⑦判定会議の結果から、鑑別結果通知書を作成する
⑦で作成された鑑別結果通知書は家庭裁判所に送付され、審判の重要な材料となります。
少年院
少年院は、警察での取り調べ・被害者との示談状況・家庭環境や交友関係の調査・
少年自身の問題性・反省度合いなどの様々な事項をまとめ、
最終的に社会での更生が困難だと判断された場合に送致されます。
この際、家裁調査官の調査結果、および鑑別所での鑑別結果の2つの資料が、
処分内容の決定に非常に大きな影響を持ちます。
つまり、家裁調査官との面接、鑑別所内での生活態度や心理テストの結果が、
少年院に入るか入らないかを決めると言っても良いでしょう。
しかし、少年院は懲役や禁固などの”刑罰”とは全く異なり、
少年を健全な社会生活に適応させるための”矯正教育”を行う施設であり、前科もつきません。
鑑別所と少年院は全く異なる施設ですが、少年院と刑務所もまた全く異なるのです。
※少年院と少年刑務所の違いに関してはこちら→少年院 少年刑務所
鑑別所・少年院ともに法務省が管轄する国立の施設であり、
両施設とも担当スタッフは法務教官となりますので、
少年院生活を送っていると以前鑑別所でお世話になっていた職員が
少年院に転勤してきて再会する、ということは割りと頻繁にあります。
鑑別所と少年院の職員のどちらが上ということはないみたいですが、
職員としては少年院より鑑別所の方が良いみたいです。
非行度合いがより進んだ少年ばかりを収容する少年院では、
そのぶん更生が難しく、問題も多いからなのだと思います。
まとめ|少年院と鑑別所の違い
鑑別所は、少年を社会から隔離した上での矯正教育が必要か否かを判断する施設。
少年院は、鑑別結果などから「社会生活での更生は難しい」と判断された場合に
送致される矯正施設です。
以上のような理由から、少年院は各施設によって厳しいところもありますが、
鑑別所は基本的にとても快適な生活空間となっています。
職員は優しく、ご飯はおいしく、毎日の生活もかなり過ごしやすい日課になっています。
あくまでも、鑑別するための施設ですから。
そのため、身内や彼氏・彼女が鑑別所に収容されてしまった場合に
色々と心配になってしまうことがあるかと思いますが、
それほど心配しなくても大丈夫だと言えます。